苦くて不味い黒い液体
コーヒーはいつ頃からコーヒーとして飲まれるようになったのか。
そんな話しが延々と続く。
イスラムの信者は聖地メッカを目指す。結果、アラビア半島の東海岸中心に位置するメッカには多くの信者が各地から集まる。
アラビア半島の南端からやってきたスーフィー派の信者は、旅の途中でカフワを作った残りカスのブンの種子を火で煎って黒い液体を作ることを知った。
その飲み物は、すこぶるいい香りをするが、とてつもなく苦い。
苦くて不味いが、薬だからと思って祈祷をするときの飲む。
そんな飲み物だから、簡単に民衆に広まるはずはない。
それでも、スーフィー派の信者は寝ないで祈祷するので、その苦い黒い液体を用いた。ブンが採れない中北部のアラビア半島地域では、果皮を持ち歩くと熱さで腐ってしまうので残りカスの生豆を携帯して、宿泊先のモスクで豆を煎ってその黒い液体を作って飲んだのだ。
ここに、私たちが現在飲んでいるコーヒーのルーツがあると私は推論する。黒焦げになった豆を煮出して飲むことを考えつくのは、ギシルのようなカフワを飲用する習慣のあったスーフィーの信者だからこそだ。
そして、その黒い液体が民衆に広まるのは、カイロで砂糖との出会いがあったからではないだろうか。
砂糖の歴史は古く、3200年前には既にインドでサトウキビから抽出した液が甘味料として使われていたことが分かっている。インドからペルシアに伝えられた砂糖はアラビア一帯で愛好され、砂糖を焼いて作る「カラメル」のようなさまざまな砂糖菓子がそこから生み出されていった。
その砂糖がインドからイスラム商人によって地中海の貿易都市カイロに運ばれてきていた。そして、苦いコーヒーと甘い砂糖とが出会う。
日本ではコーヒーに砂糖を入れて飲まないのが通のような雰囲気があるが、トルココーヒーもエスプレッソもたっぷりと砂糖を入れて飲む。世界のコーヒーの楽しみ方としては、砂糖を入れて甘くして飲むほうが普通なのだ。
このように甘い砂糖やお菓子と出会ったら、コーヒーの魅力は倍増する。
今風に言えば、スィーツとのコラボレーションだ。
そして、スーフィーの信者が飲むそんなコーヒーをイスラム商人が見逃すはずはない。どこで手に入れたのか、どんな場所で採れるのかと調べ、イエメンの山岳地帯で収穫されたコーヒーの果実を買い漁る。
そんな甘いコーヒーが、改めて聖地メッカにもたらされた。
そして1511年、預言者ムハンマドの誕生日の前日にメッカ事件が起きる。
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